Vol.02 2020年大学受験大変革により「家庭のあり方」が問われる時代に(後編)

---後編 最も重要となる「小学一年生」になにをするべきか-----

今後の教育改革を前に、今後の家庭で実践していくべきことはより多くの語彙を獲得するための「読書」と読書を通じて獲得した語彙を使えるようにする「会話」が重要と説く陰山氏。

それでは、そういった読書や会話はいつから始めれば良いのだろうか?

「教育の早期化は進んでいます。幼稚園・保育園のころから、できるだけ本を読めるようにした方が良いでしょう」

しかし一方で、隂山氏は早期教育の難しさにも言及する。

ハイリスクにもなり得る早期教育は慎重に

「小学校前の子どもは、教育のストライクゾーンが非常に狭いです。親はついつい能力に合わない難しいことをやらせてしまいがちですが、すると子どには“できない”“わからない”というネガティブな感情だけが芽生え、理由も分からないまま勉強が嫌いになってしまいます。

そんな状況に陥っても、幼児期には助けてくれる学校の先生もいません。しかし、早期教育はリスクも高いですが、急成長する時期には間違いありません。適切な方法で進めてあげたいですね」

さらに、自らの実践の結果、教育において特に重要な時期は小学一年生だと陰山氏は話す。

なぜ最も重要な時期は「小学一年生」なのか

「小学一年生のときに、繰り上がりと繰り下がり、ひらがなカタカナ漢字を習熟できるかどうかがすべての分かれ道になります。人間の知性にとって最も重要なのは小学一年生なのです」

非常に重要な時期となる小学一年生のときに、注意すべきことがある。
「嫌だけどやっている」ということを、「がんばっているから素晴らしい」と評価するのは非常に危ないのだという。自身の経験を元に、隂山氏はこう語す。

「以前ある学級で、平家物語の暗唱をさせたことがありました。どんな学級にも、3~4分音読させただけで暗唱できる子が1~2人はいますが、それ以外の子はそんなに簡単に暗唱できるようになりません。しかし私はその時、暗唱できていない子を指名して発表させてしまったのです。その子は途中で言葉に詰まり、黙ってしまいました」

敗北するのは大人で良い。子どもを勉強嫌いにさせないために

もしここで、「途中までしかできなかったね、でも次はがんばってね」と声をかけて座らせたら、子どもながらに敗北感を感じて勉強が嫌いになってしまうかもしれない。

「そこで私は、ちらりと教科書を見せてあげました。先生である私が“ズル”をしたわけです。それを見た他の子たちも、“この先生は詰まっても見せてくれる”と思ったのか、続々と手を挙げて挑戦しようとしました」

勉強が好きになっているのは理想的な状況だが、勉強が好きになるためには、できることをよりできるように導いてあげるのが良いのだ。

親ができるのは、基礎力を上げること?

ここまでの話を総括して「2020年の大学入試を前にして親ができることは、昔から言われ続けている読書、読み聞かせ、読み書き、計算で良いのですね?」と質問を投げる。すると隂山氏は「半分正しいけれど、半分間違っている」と答えた。その真意は何なのか?

「基礎力を相当レベルに上げていかなければなりません。

今までは基礎を基礎として単純に覚えるだけで良くて、応用編は学校でなんとかしてくれましたが、これからは、学校に来たとたん『はい、言ってごらん』になるのです。かなり早い段階で、学校の授業の前段階ができている必要があります。学校の教科書の文章はすごく長くなるはずですから、これを学校で丁寧に教える、などというのは根本的に無理になるのです」

学校は基礎を学ぶ場所ではあり続けるが、「基礎を活用する場が増え、基礎をきちんと習得するための時間的なゆとりがなくなる」のだと指摘する。

このような話をしていると、子を持つ親は「なぜ家庭にまで変化を及ぼすような大きな改革が、今行われるのか」と釈然としない気持ちにもなるだろう。

なぜ今、このような教育改革が必要とされるのか?次回はその背景について考察する。

(Vol. 3)へ続く

Vol.3:なぜ今、教育は変わるのか。日本の教育事情を世界水準で読み解く (近日公開予定)

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Vol.01「学習」は、こう変わる! ~2020年大学受験大変革に備える学習法とは(前編)

Vol.01「学習」は、こう変わる! ~2020年大学受験大変革に備える学習法とは(後編)

Vol.02 2020年大学受験大変革により「家庭のあり方」が問われる時代に(前編)

<<陰山英男>>立命館小学校校長顧問、立命館大学教育開発推進機構教授。安倍内閣の諮問機関「教育再生会議」委員を歴任。小学館の通信添削学習『ドラゼミ』総監修者。

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