「詰め込むだけ」の学習が、高学歴で使えない人間を生む

グローバル化、ICT、大学入試改革など様々な変化が起こる教育業界だが、現在の学校教育は時代のニーズに対応していないと論じる人物がいる。東進ハイスクールの現代文のカリスマとして知られ、広島女学院大学客員教授を務める出口汪氏だ。

出口「日本の教育は蘭学がルーツとなっています。ヨーロッパに先進的な答えがあり、それを見つけるのが教育でした。西洋の学術書を翻訳することから始まったため、翻訳能力(英語)を重視しています。そして計算能力・記憶能力も重視している傾向にあります。しかし今はグローバル化が進んで、実際に外国の人とコミュニケーションをとる時代ですから、翻訳能力だけではなく意思疎通できる力が問われます。また、今や計算はコンピューターで完結しますし、必死で記憶しなくてもインターネットで情報を検索できる時代です。」

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これからの時代の教育の土台となるのは「論理」と「作文」

それでは、いったいこれからの時代に求められる教育とは何なのか。キーワードとなるのは、「論理」と「作文」だと出口氏は話す。

出口「まずは作文。これからの時代は、文章を書く力が個人の評価に大いに関わってきます。現在“書く”という作業は、手書きではなく電子化しています。電子化された文章は記録として残り、SNS等で拡散され、そして不特定多数の人間に読まれる可能性があります。ビジネスシーンでは、その人間がどんなメールを書いたかでビジネススキルが計られます。SNS等でその人の投稿内容を見て、文章が稚拙であれば評価が下がります。つまり、これまで以上に、文章を見て個人の能力や教養が計られてしまうわけです。」 

高校生から焦って勉強をしても手遅れ

さらに、2020年に抜本的に大学入試制度が変わる。最も大きな変化は、センター試験からマークシート問題と別個に記述式問題が出題されることだ。ここでますます、文章を書く力が問われることになる。

出口「高校生から焦って勉強をしても手遅れです。作文を書く力は、幼少期から身につけておかなければいけません。もちろん国語や小論文対策だけではありません。数学だって文章問題を読解しますし、英語も日本語に翻訳する際に作文力が問われます。作文力はすべての教科の土台になると言っても良いでしょう。」

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学習トレーニングによって論理力を培う

それでは、良い文章を書くためにはどんな訓練を行うべきなのか。

出口「そもそも良い文章とは、日本語の規則を正しく守った上で書かれていること、そして論理的であることが必須条件となります。論理的でない感情を撒き散らすだけの文章を人前にさらすということは、大通りを裸で歩いているようなものだという危機感を持って欲しいですね。」

作文力を高めるには論理力が必要。そして論理力は、遺伝などの先天的要素ではなく、学習トレーニングによって後天的に身につけていくものなのだという。

出口「まずは国語を学習することで、論理力を身につけることができます。国語の教科書で扱う文章は、筆者が不特定多数の人間が理解できるよう筋道を立てて書いた、非常に論理的な文章です。その文章を読解することで論理的読解力を身につけ、そして次はその力を使って論理的文章を書くのです。」

国語ができる・できないは、センスや感覚だと考えている人も多い。しかしそれは誤解で、国語も論理を意識して学習することで実力を伸ばすことができるのだ。

出口「例えば【4つの選択肢の中から正しい答えを一つ選びなさい】という問題があったとします。これは、出題者が意図的に作った間違った選択肢を3つ探せばよいわけですから、出題者の意図を見破ることができれば解けるのです。そこで必要となるのも、相手の意図を分析する論理力なのです。」

学力を本当に必要としているのは大人たちだ

これからの時代は情報や記憶を詰め込むだけではなく、論理的に考える力、そしてそれを的確に表現する作文力を培うことが教育の肝になりそうだ。

出口「詰め込むだけの教育を必死で続けても、それを表現する力がなければ、高学歴でも使えない人間になってしまいます。学力とは、実は子どもではなく、大人が社会で生きていくために必要な力なのです。目の前の試験で良い点数をとることではなく、大人になってから活用できる力を子どものうちに身につけることが学習の本質なのです。」

近年は文部科学省も、社会で生かせるスキル習得を視野に入れたキャリア教育の推奨に踏み込んでいる。今後の教育業界は、どのような変化を遂げていくのだろうか。

<<出口汪>>東進ハイスクールの現代文のカリスマ講師。2000年に教材開発・出版を目的とした水王舎を設立。小学館刊行の「出口汪の日本語トレーニング」が反響を呼ぶ。

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