『一人で夜ご飯』は子どもにどんな影響を与えるのか?世田谷区『子ども食堂』の取り組み。

みなさんは、『子ども食堂』という場所が存在するのをご存だろうか?

子ども食堂とは、貧困家庭や孤食の子どもたちに対して、地域の大人が無料もしくは安価で食事を提供する場として始まった民間発の取り組み。近年はメディアで取り上げられることも増え、その活動が周知される共に社会活動の一環として活発化の動きを見せている。

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ひとことで「子ども食堂」と言っても、それぞれ運営スタンスや目標意識は異なるようだ。例えば世田谷区赤堤にある『子ども食堂・みっと』では、貧困の児童に限定することなく、「みっとに行きたい」と希望する児童は積極的に受け入れているという。

一人で食事するより、みんなでご飯が食べたい

「子ども食堂をオープンしてみると、実際は貧困に悩んでいるというよりも『自宅で一人で食事をするのではなく、誰かとおしゃべりをしたり一緒に遊んだりしたい』など、人との関わりを求めているお子さんが多く訪れるんです。」

そう話すのは、『みっと』の運営者である村上さん。

子ども食堂『みっと』は、現在の活動場所である赤堤のレンタルスペース「シーマシーマ」のオーナーである井上さんが、「この地域で支援を必要とする子どもたちのために何かできることはないか…」と考えたことから始まった。井上さんは世田谷区社会福祉協議会の協力を得ながら仲間を集め始めた。以前から地元で料理サークルを開催していた村上さんに声がかかったのもそのときだ。その後、地域でそれぞれ活動をしている6人の仲間と共に子ども食堂『みっと』を開設。「食」を通じて地域の子どもたちの成長を支援し見守るという取り組みをスタートさせた。

子どもたちに無料で食事を提供するために、必要経費は村上さんたちの取り組みに賛同してくれた人々からの寄付や助成金で賄っている。

メディアで『みっと』の取り組みを知って野菜を送ってくれる地方の人もいれば、「子どもたちのために使ってください」と現金を持参してくれる地元住民もおり、その中には高齢者の姿もあるという。現在は世田谷区社会福祉協議会の「世田谷ゼミナール」所属の大学生ボランティアが、子どもたちの遊び相手になったり、学習を支援するなどして手伝ってくれている。

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現地には食堂運営の貴重な協力者となってくれる大学生の姿が。

食事の時間を通じて、好奇心や学習意欲を育む

一人で食事をとることが多い子どもたちを見て、村上さんたちがいくつか気づくことがあるという。

「大きなお皿に盛った数名分のおかずに、なかなか手を付けないんです。みんなで取り分けて食べる、ということを知らないようです。みんなでいただきますやごちそうさまをしようとしても、そのルールを守れない子も…。食事前や食事中に騒いで、世話をしてくれる大学生を困らせてしまう子どもたちもいました。」

一人で食事をとることが多い子どもたちは、食事がコミュニケーションの場であるということを理解するのに時間がかかるということなのだろうか。

「でも、最初は自分のことしか考えていなかった子も、私たちが丁寧に関わっていけば変わるんです。次第に他の子におかずを取り分けて渡してあげるようになったり、周囲とのやりとりに変化が出てくるんです。」

みっとでは、食事中の「会話」をとても大切にしている。例えば「今日食べているお魚はなんだと思う?」と質問したり、旬の野菜や寄付してもらった食材がどこから送られてきたのかを話したり、日本地図を見ながら原産地を説明をしたり…。「食べる」ということを通じて、子どもたちの好奇心や学ぶことに対する興味を育むきっかけも作っている。

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また、食事の前後に別スペースに移動して、大学生が子どもたちの学習サポートをする時間も設けている。その時間のコミュニケーションを通じて、子どもたちが自分の将来の夢や目標を意識し、学習へのモチベーションが生まれることもあるそうだ。

みんなが気軽に誰かと食卓を囲める仕組みを

「世田谷区には、一人で食事をしている子どもたちはたくさんいるはず。しかし情報がきちんと行き届いていなかったり、子どもたちが一人で来ることを躊躇したりといった理由で、まだまだここに来る子どもたちの数は限られています。」

今後は『みっと』の存在をより多くの人に認知してもらい、支援を必要とする子どもたちが気軽に足を運べるような居場所を作りたいと村上さんは話す。

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「今後は高齢者世帯と子どもたちをうまくつなげる取り組みもできないかと考えています。例えば、高齢者のお宅に子どもたちがご飯を食べに行く。“ごはんを食べに来ない?”と、気軽に言えるような住民同士の関係を作りたいですね。見知らぬ子を自宅に招くことに抵抗があっても、地域の人や団体が関われば、受け入れたいという高齢者もいるのではないでしょうか。」

インタビュー冒頭に聞いた「現金を寄付してくれる地元の高齢者がいる」という言葉が頭をよぎる。彼らはなぜ、寄付をするのか。それは、彼らもまた、一人で食事をすることの寂しさを知っているからではないだろうか。貧困に悩む子どもたちの救済と同様に、独居老人たちの生活に目を向けることも、今後の地域の課題の一つとなるのかもしれない。

核家族、一人っ子、夫婦共働き、シングルマザー…。現代にはさまざまな理由で「一人で夜ご飯」を食べている子ども少なくはない。そういったことを当たり前とは思わずに、手を差し伸べる人間や場所がもっと増えてくれることを願いたい。

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