
読書感想文
オトナも読みたい!今月の本 ーヤギとオオカミは友だちになれる?―『あらしのよるに』
ドラゼミの問題作成者である佐藤友樹先生が毎月テーマに沿った本をご紹介する「オトナも読みたい!今月の本」。
4月は「敵か味方か、友だちか」、面白い設定の「関係」をえがいた作品を紹介します。
『あらしのよるに』
木村裕一=作/あべ弘士=絵(講談社)
中学年から大人まで
複数メディアで展開された大ヒット作品
今回ご紹介するのはヤギとオオカミの友情を描いたシリーズ作品『あらしのよるに』。1995年の第42回産経児童出版文化賞JR賞および第26回講談社出版文化賞絵本賞受賞作品であり、アニメや映画、舞台など複数のメディアで展開されているので、すでに皆さまおなじみの作品かもしれません。
この作品の魅力はなんといっても、ヤギとそれを襲うはずのオオカミの「友情」を描いた点です。
ヤギとオオカミの垣根を越えた友情物語
あらしの夜に出会った、オオカミのガブとヤギのメイ。
あらしをのがれるために入った真っ暗な小屋の中、お互いの正体も知らないまま言葉を交わして友達になり、また後日会う約束をして別れます。そして、約束の場所で再会し、初めてそこでオオカミとヤギであることが明らかになります。
このあと、変わらない友情を持ち続けようとするのですが、オオカミの食欲、ヤギの猜疑心、仲間たちに知られることへの恐怖など、さまざまな困難を抱えて友だちの関係も危うくなっていきます。
全7巻のシリーズは、ユーモラスな会話を交えて読み応え満点のストーリー。傑作です。
【監修】―木村裕一(1944~)東京都生まれ。多摩美術大学卒業。造形教育の指導、テレビ幼児番組のアイディアブレーンなどを経て、絵本・童話作家に。『あらしのよるに』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞、JR賞受賞。全7巻のシリーズとなった同作品は映画化、アニメ化もされ「日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞」を受賞。絵本・童話創作に加え、戯曲やコミックの原作・小説など広く活躍中。著書は600冊を超え、国内外の子どもたちに読み継がれている。