現代の父親たちが、子どもたちに“本当に”してあげるべきコト【FJ代表 安藤氏インタビュー】

小さな子どもたちを持つ父親の多くは、社会では“働き盛り”として最も忙しい時期を迎えている。そんな状況の中、「自分は子どもに何をしてあげるべきか」に頭を悩ませるパパたちも多いのではないだろうか。

そこで今回は、現代の父親たちの育児支援を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン代表の安藤哲也氏に、独特の子育ての話を交えながら、父親だからこそできる子育てについて話をお聞きした。

「子どもらしい時間」を教えられるのが父親

父親は子どもの教育にどのような形で関わるのが理想でしょうか?

最近の父親たちを見ていると、子どもの教育への関わり方は「二極化」している印象を受けます。一部の父親たちは、子どもの受験や偏差値といった領域に踏み込んで教育に取り組んでおり、そういった人たちは高学歴・高キャリアである傾向にあります。受験や偏差値といったものは数値的なゴールが明確なので、高キャリアの男性たちからすると、取り組みやすいのかもしれないですね。

ただ、教科書や参考書を使った勉強を教えるだけでなく、父親たちにはもっと違った学びにも目を向けて欲しいです。子どもにとって大切なことは「子ども時代に子どもらしい時間を過ごすこと」で、それを教えられるのが父親ではないかと思うのです。

“子どもらしい時間を過ごす”とは、具体的にどういったことでしょうか?

群れて遊んで、誰かと協力して何かを達成することや、喧嘩をして意見をぶつけあうことなどです。そういった経験を通じて子どもたちは忍耐力や克己心、協調性を身につけていくのだと思います。

私は昭和37年生まれ。池袋で育ったのですが、当時の池袋には土管が積まれた空き地がたくさんあって、そこにのび太くんやジャイアンみたいな仲間がいっぱいいたんです。そういった連中と小学生時代に群れて、もまれて、喧嘩して、ときには近所のおじさんに怒られてきました。自分が大人になってみて、そういう経験が生きる上で一番役に立っているなあと実感するんです。

学校という管理化された空間では、どうしても色々なものが規制されてしまいますから、それ以外の時間や空間で過ごす大切さを、父親が教えてあげられるといいですよね。

大切なのは一緒に何かをしてあげること

Fotolia_66130548_S.jpg子どもらしい時間を過ごすために、父親がしてあげられることは?

大切なのは子どものために何かをするのではなく、何か楽しいことを子どもと一緒にすること、そして頑張ったらちゃんと褒めてあげることです。うちはよく息子と一緒に洗車していたのですが、終わった後に「きみが洗車してくれたおかげでボロ車が見違えたな」と食卓で話すんです。子どもにとって父親に褒められるってすごくうれしいことだから、一生記憶に残るはず。ディズニーランドに行ったことよりも鮮明に覚えているんじゃないかな。

ただ一緒に何かをするだけでなく、子どもに役割をきちんと与えてあげることも有効です。私は息子に「今日はタイヤ係だぞ」と役割を命じてました。父親に褒められたくて、彼は一所懸命やってましたよ。たまにはご褒美をあげても良いでしょう。働くことで得られる対価というものを学べるので、これもキャリア教育の一環かな(笑)。

平日仕事で忙しい父親たちは育児に関われない分、「週末くらい何かしてあげないと」という気持ちから、無理に豪華なイベントを作ろうとします。しかし毎週イベントを考えるのは大変で、結局頭を悩ませてしまいます。お金もかかりますしね。

でも子どもがまだ小さい頃は特別なイベントなんかなくていいんです。わざわざ混んでいる遊園地にお金をかけて行かなくても、公園や近所で十分。子どもは遊具がなくても色々なものをおもちゃにして遊ぶ天才ですから。

作文だってそうですよね。原稿用紙とペンしかない状態から物語を作っていく。それも子どもにとっては面白い遊びになるはずです。

毎晩の読み聞かせが、読解力を育んだ?

安藤さん自身は、お子さんとどんな時間を大切にしていましたか?

娘にはとにかく絵本をたくさん読んで聞かせていました。寝る前、朝起きてから、保育園から帰ってきてから…。一日平均して5~6冊読んでいたかな。特に何か効果を期待して読んでいたわけではなく、たまたま私も本が好きでしたから、絵本にハマりまして。絵本は子どもとの楽しい「コミュニケーションツール」だと気が付いたんです。

娘が生まれるときは、100冊の絵本を買って娘の誕生を待っていました。生後六ヶ月くらいから読み始めて、毎晩欠かさず2冊ずつ読んでいました。最初に読んだのは松谷みよ子さんの「いないいないばあ」でした。娘は現在高校三年生ですが、国語の成績は学年トップクラスみたい。読解力のある子に育ったのは、読み聞かせのおかげかな?

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父親が絵本の読み聞かせをすることのメリットはありますか?

絵本を読んで聞かせるとき、子どもを膝の上にのせますよね。父親の膝の上って、子どもにとって特別な場所なんです。“絶対安全地帯”とでもいうのでしょうか。父親の声、温かさ、母親とは違う肌感触がある。それらを通じて体感する「自己肯定感(自分が誰かに肯定されている)」や「自分が愛されている」という感情が、子どもを魅力的な人間に育てるのです。自分を大切にしてくれた人間のことを子どもは裏切りませんから、親を困らせるような悪いこともしないし、自立も早いのではないでしょうか。

そして愛されて育った子どもは、他人にも優しくできる。困っている人を見たら助けてあげようという子どもに育つのです。いじめがあれば、それをとめるような子どもになるはず。父親の愛情は、子どもにすごく影響力があるんです。

命令ではなく、問いかけることが子どもの学びをサポート

お子さんと会話をするうえで気をつけていることはありますか?

現在小二の息子とは妖怪ウォッチのことやYou Tubeのことなどをよく話しています。息子の方から「パパこれ知っている?」と聞いてくるので「知らないけど、これの何が楽しいんだい?」と笑顔で聞きます。私からはお風呂などで、「今日学校で楽しかった出来事は何?」などの質問をよくしています。そのことを話すときの息子の表情や、表現の仕方に気を付けています。

私は子どもに対して、「●●しなさい」という命令形ではなく、問いかける父親であることが重要だと考えています。問いかけることで、子どもは情報を整理する力が身につくし、よりわかりやすく面白く伝えようとするから、想像力や発信力などの学びにつながります。

逆に「何でできないの?」という一言は良くないですね。なぜなら子どもが回答不可能だからです。何でできないのかなんて子どもには分からない、それが分かっていれば子どもはとっくにできているはずですから。

私は子どもに「宿題をやりなさい」と言ったこともありません。宿題をやらずに学校に行って、恥をかいたり困ったりするのは自分だということを学んで欲しいと思うからです。逆に「先生にもどんどん質問して、先生に宿題を出してみれば?」とアドバイスをしていました。

母親が顕微鏡なら、父親は望遠鏡

子育てにおいて、母親と父親の役割分担はありますか?

日々の育児や家事は夫婦でシェアしてやればいいと思います。ただ子どもの成長においては、母親が顕微鏡だとすれば父親は望遠鏡だと思うのです。多くの母親はどうしても、「今日着ていくもの」とか「今日食べるもの」とか直近のことを考えてしまうマイクロマネジメント的な傾向があると思います。父親はそれをやりつつ、もっと先のことも考えるべきではないでしょうか。「この子が20歳になったらどんな人間になっているのか」と未来を考え、人材育成的な視点を持って子どもに接するべきです。

私は自分の娘や息子が、仲間から慕われたり頼りにされたりする魅力的な人物になるにはどうすれば良いかを考えて子育てをしてきました。そのために必要なのはおそらく学力だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション力、そして弱い者を助ける力などだと思っていました。そういった力の源となるのは自己肯定感であり、自己肯定感を育むためには、親からの愛情、夫婦のあり方、父親自身の生き方をどう見せるかが必要不可欠だと思いましたから、十分にそれを示してきたつもりです。

大変じゃない子育てなんてありませんが、子育ては期間限定のものです。何よりも子どもは可愛いし、その成長が楽しみですよね。日本中のお父さん、もっと子育てを楽しんでください。

<<安藤哲也>>三児の父親。 2006年11月、会社員の傍ら、父親の子育て支援・自立支援事業を展開するNPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表に。NPO法人タイガーマスク基金代表、にっぽん子育て応援団共同代表も兼務。

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