[仕事図鑑]棋士のお仕事 渡辺明竜王(前編)

夢いっぱいの子どもたちに、そしてお仕事の裏側を垣間見たいと思っている大人たちに、さまざまなお仕事の魅力を伝える「仕事図鑑」。

第1回は棋士の仕事をご紹介します。今回お話を聞かせてくれるのは、20歳で竜王の座を獲得し、初代永世竜王に輝いた渡辺明さん。棋士という仕事のやりがいや面白さ、プロ棋士になるまでに必要なことなどをお聞きしました。

年間数十日の対局と、研究に没頭する日々

まずは棋士がどんなお仕事か教えてください。

棋士の仕事は「将棋を指すこと」です。年間40日くらいは対局(将棋の対戦)を行います。

それ以外の日は「研究」に最も時間を費やしています。過去に行われた対局の手順を記録した棋譜というものを見ながら次に戦う相手の得意な戦法を分析したり、新しい戦法を考えたりします。対局の2週間前くらいになると、次の対局に向けてスケジュールを立てて研究に着手します。

将棋はとても複雑なゲームですから、定跡(きまった戦い方)の中にも時には間違いがあります。研究を重ねてこうした“あな”を見つけるにはとても時間がかかりますが、みんなが信じて疑わない定跡をひっくり返すことができれば、勝負に勝つ確率が高くなるのです。

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1日のスケジュールを教えてください。

対局がある日は、朝9時から夜12時くらいまで相手と対戦することがあります。対局は将棋会館で行うこともあれば、地方まで足を運んで行うこともあります。

対局がない日は朝9時くらいから研究を始めることが多いですが、研究の時間は自由なので、「何時から何時まで働く」という明確なルールはありません。私はプライベートな時間も大切にしたいので、夕食後はなるべく仕事をしないようにしています。

どうすれば棋士になることができますか?

まず試験を受けて「奨励会」という棋士の養成学校に入会する必要があります。入会には年齢制限があるので、できるだけ若いうちに入会するのが得策です。奨励会には段位や級位が設定されており、成績に応じて位が上がっていく仕組みになっており、四段に上がると晴れてプロの棋士になることができます。

勝つだけでなく、見る人を楽しませることも大切

棋士という仕事のやりがいや魅力は何でしょうか。

自分の指した将棋が、新聞やテレビ、そしてインターネットで配信されて、大勢の方に見て楽しんでいただけることです。特にここ10年くらいはインターネットでも対局の様子が配信されているので、より多くの方にリアルタイムで見ていただけるようになり、そのぶん反響も大きくなりました。将棋界は見てくれる人がいないと成り立たない世界ですから、勝負に勝つことだけでなく、見る人を楽しませるという要素も忘れてはいけません。

最近は将棋の内容だけでなく、私の個性に注目してくれるファンも増えているのでうれしいです。インターネットのおかげで30代の若い方や女性ファンも増えてきたので、将棋界もこれからますます盛り上がるのではないでしょうか。

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プレッシャーを感じることはありませんか?

タイトルを獲得すると「追われる立場」になるので、もちろんプレッシャーを感じることはあります。追われるよりも、追いかけている方が楽かもしれないですね(笑)。

将棋は「強い方が勝つ」というわかりやすい世界ですから、普段の勉強や研究によって技術力を磨くことが最も大切です。しっかり研究を重ねて挑めば、「勝つか負けるかは時の運!」と開き直って、プレッシャーを跳ね飛ばすことができます。


後編では、渡辺竜王の子どもの頃のお話や、意外(!?)な影響を受けた人物、そして棋士を目指す子どもたちにメッセージをいただきました。後編もどうぞご覧ください。

[仕事図鑑]棋士のお仕事 渡辺明竜王(後編)

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<< 渡辺明 >> 将棋棋士。父に将棋の手ほどきを受け、小学4年で小学生将棋名人戦に史上最年少で優勝。プロ入り後、わずか20歳にして竜王位を獲得。2012年には竜王戦9連覇を果たしています。

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