人気者になりたいから書く。 そんな理由でペンを持ったっていい。

様々な職業の仕事場を描いた「しごとば」、言葉遊びを上手く使った「す~べりだい」「ぶららんこ」。絵本業界に新しい風を吹き込む作品を発信する絵本作家・鈴木のりたけさん。その斬新な発想や意表をつくアイディアは、どうやって生まれるのか?なぜ「書くこと」を仕事に選んだのか?先生のお気に入りの仕事場で、様々なお話をお聞きした。

自分からアクセスして情報を収集し、アイディアを貯金しておくんです

絵本作家を目指したきっかけを聞かせてください。

正直なところ「絵本作家になりたいと思ってなった」というよりは、「結果的に絵本作家になった」という感じです。大学を卒業してJRに入社したのですが2年ほどで退職して、無職になったので自分で雑誌を作り始めたのです。でもそれではお金にならないので、ちゃんとお金を稼ぐために、制作会社でデザイナーとして働き始めました。ある日私の書いたスケッチを先輩が目にして、「上手いじゃん。本気で絵を描いてみたら?」と言ってくれて。それから毎日、夜な夜な絵を描くようになりました。それが2005年くらいの出来事ですね。

01.jpgそこからどうやってプロの絵本作家に?

自分の描いた絵にストーリー性を持たせようと思って、連続した絵を描いて台詞を付け足していたら絵本が完成しました。そこである出版社の企画に応募してみたところ、賞を受賞して出版していただけることになったのです。たまたま本屋でその作品を見た某出版者の編集者が、「こんな面白い絵を描く奴がいるんだ」と目をつけてくださって。それがきっかけで、色々とお仕事をいただくようになりました。最初は会社員と絵本作家の二束のわらじで、実は「しごとば」を発行したときはまだ会社員でした。その後徐々に仕事が増えてきたので、「そろそろ絵本作家一本でやっていこう」と決意して。会社を退職することに全く不安はなかったですね。むしろ「やってやる!」という意欲にあふれていました。

02.jpgどんなときに作品のアイディアが生まれるのですか?

何もしなくてもインスピレーションが湧くほど、世の中甘くないですよね(笑)。だから、自分からアクセスして情報を集めています。暇があれば写真集を見たり、気に入ったものがあればスクラップしたり。すぐに役立つことはないかもしれませんが、アイディアを貯金しておくようなイメージです。

03.jpg

自分の想いを言語化できる人は、かっこいいし影響力があると思う

子どもの頃は絵や文を書くことに興味はありましたか?

小学生の頃は『少年ジャンプ』が全盛期で、掲載されている漫画を模写していました。絵の上手さでは、クラスの3本指に入っていたかな?図画工作の授業も得意でしたし、作文も好きでしたよ。他人の書いた文章を読むのは苦手でしたが、自分で文章を書いて、自分の考えをアウトプットするのは楽しかったですね。

中学一年生のとき、国語の先生が生徒の日記の中から面白い作品を集めて、全員の前で発表するという試みを始めたのです。自分の作品を発表されるとすごく気持ちよくて、毎日必死で書いていましたね。そのときに、アウトプットすることの面白さをダイレクトに肌で学ぶことができたような気がします。やはり読んでくれる人・評価してくれる人がいるというのは、大きなやる気につながりますね。

04.jpg

先生にとって“書くこと”とは何でしょうか?

人間は誰でも「人気者になりたい、目立ちたい」という願望があると思うのです。人から興味を持ってもらうためには、自分の考えや個性をアウトプットしなければいけない。私にとってそれがたまたま絵や文を書くことでした。人気者になりたいから絵を描く、目立ちたいから文を書く。そんな素直な気持ちで書いてみても良いんじゃないかな。

自分の気持ちを伝えることができる人間って、すごくかっこいいと思うんです。丁寧な言葉を使える人はたくさんいるけど、そういう人たちの話って、言葉がくるくるまわっているだけで中身がない気がします。本当にかっこいいのは、難しいことを分かりやすく表現できる人や、みんなが思っているけどなかなか言葉にできないことを的確に言語化している人ではないでしょうか。そういう人は人気が出るし、影響力もあるでしょうね。

05.jpg

子どもたちには、正しい日本語を使うように教えています

3児の父でもある先生ですが、お子さんとどんなコミュニケーションをとっていますか?

よく駄洒落の言い合いをしています(笑)。あとは、日ごろから「正しい日本語を使うように」と教えています。例えばお茶を飲みたいときに「お茶!」で済ませるのではなく、ちゃんと「のどが渇いたからお茶をちょうだい」と言うように教えています。「お茶」と言えばお茶は出てくるけど、それは相手が親だから。相手の理解力に頼るのではなく、自分自身で意思を伝えることのできる人間になって欲しいと思っています。

06.jpg絵が上手になりたい!と思っているお子さんにアドバイスを。

例えば木を描きたいと思ったら、頭の中にあるイメージで描くのではなく、一度実物を見に行ってみましょう。曖昧にインプットされたものを曖昧にアウトプットするのではなく、描きたい物の情報をきちんと収集して正確に表現することが大切です。それは絵だけでなく、文を書くときも同様だと思います。

最後に、今後の展望をお願いします。

難しいことも絵で説明すればぐんとわかりやすくなる。絵は物事を明確に伝えることのできる、気持ちのよいツールだと思います。そんな絵のもっているパワーを最大限に生かした作品にも挑戦してみたいですね。

絵本は子どもだけでなく、大人も楽しめるものだと思っています。これからは、もっと大人が楽しめる絵本も作っていきたいです。

<<鈴木のりたけ>>『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞を受賞。『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞を受賞。代表作は 「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)『おしりをしりたい』(小学館)『そだてば』(朝日新聞出版)など。

prof.jpg

作文力.com TOP > インタビュー > 人気者になりたいから書く。 そんな理由でペンを持ったっていい。

関連記事